ジョバンニが勢よく帰って来たのは、ある裏町の小さな家でした。
家へは帰らずジョバンニが町を三つ曲ってある大きな活版処にはいってすぐ入口の計算台に居ただぶだぶの白いシャツを着た人におじぎをしてジョバンニは靴をぬいで上りますと、突き当りの大きな扉をあけました。中にはまだ昼なのに電燈がついてたくさんの輪転器がばたりばたりとまわり、きれで頭をしばったりラムプシェードをかけたりした人たちが、何か歌うように読んだり数えたりしながらたくさん働いて居りました。
順序なしリスト
- お母さん。いま帰ったよ。工合悪くなかったの。
- ああ、ジョバンニ、お仕事がひどかったろう。今日は涼しくてね。わたしはずうっと工合がいいよ。
お母さん。今日は角砂糖を買ってきたよ。牛乳に入れてあげようと思って。
ああ、お前さきにおあがり。あたしはまだほしくないんだから。 - お母さん。姉さんはいつ帰ったの。
順序あるリスト
- ああ三時ころ帰ったよ。みんなそこらをしてくれてね。
- お母さんの牛乳は来ていないんだろうか。
来なかったろうかねえ。
ぼく行ってとって来よう。 - あああたしはゆっくりでいいんだからお前さきにおあがり、姉さんがね、トマトで何かこしらえてそこへ置いて行ったよ。
テーブルレイアウト
| ケンタウル祭の夜 | ジョバンニは、口笛を吹いているようなさびしい口付きで、檜のまっ黒にならんだ町の坂を下りて来たのでした。 |
|---|---|
| 天気輪の柱 | 牧場のうしろはゆるい丘になって、その黒い平らな頂上は、北の大熊星の下に、ぼんやりふだんよりも低く連って見えました。 |
| 銀河ステーション | そしてジョバンニはすぐうしろの天気輪の柱がいつかぼんやりした三角標の形になって、しばらく蛍のように、ぺかぺか消えたりともったりしているのを見ました。 |
| 北十字とプリオシン海岸 | 「おっかさんは、ぼくをゆるして下さるだろうか。」 |